2014年12月2日火曜日

とびら

ふと気がつくと寒さは増して、稽古も終盤に差し掛かってきている。
僕は稽古場のドアを開けると、ふわっと香る大道具のペンキや木の匂いに、襟を正される。
毎日来ている稽古場ではあるけれど、なぜか何時も何時も違う装いに見える。
きっと其処には、日々新しい驚きと発見があるから。

台本のページを捲るよりも、滑らかで鮮やかな稽古風景は度々、僕を魅了する。
稽古を見ている時の僕は、一人の熱心な観客だ。先輩たちの熱のこもった演技に圧倒され、引き込まれて行く。
今まで紙の上の文字でしかなかった台詞たちが、命を吹き込まれ、発されていく様はなんとも言えない高揚感を覚える。
台詞が音になり、ト書きが動きになり、行間が埋められる。そのような光景を僕は目の当たりにして息を呑むのだ。
時に心を揺り動かされながら。

早くこの感動をみなさんにお届けしたい。
その一心で僕も台本と舞台と、そして稽古と向き合う。
いつか、先輩たちの様に、誰かの心を動かしたいと思いながら、僕はまた稽古場のドアを開ける。

八木澤元気