朝
秋の心地よさは薄れ、いよいよ厳しい冬がやってきた。
朝はなかなか布団から出れずに慌てて電車に乗ることもしばしばある。
今日もそんな1日の始まり方だった。
7:00 「…まだ…時間ある……」
7:30 「あと、10分だけ…」
7:35 「あと、5分!」
(( _ _ ))..zzzZZ
8:00 「!、やばい!!」
さっきまで私を苦しめていた寒さなどすっかり忘れ、次は時間との戦いだ。
布団から跳ね起き、急いで身支度を整え、小走りで駅へ向かう。
今日は接戦ではあったがなんとか時間に勝つことは出来た。
電車はいつもと同じ満員電車、そして乗り換えた電車では席に座れる。
席に座ると足もとの暖かい風が稽古場へ向かう引き締まった気持ちを緩めてしまう。
電車を降り稽古場までの道のりは緩んだ気持ちの私にはとても寒く、人ごみには鬱陶しさも感じてしまう。
見慣れた景色には関心も持たずコンビニでコーヒーを買い、いつもどおりの道を歩き向かう稽古場。
すると、前からすごいスピードで自転車の乗ったサングラスをかけた外国人が向かってくる。
ボーっとしいた私は少し左に避けた。
しかし、その外国人は避けた私に合わせて自転車の向きを変えそのまま突っ込んでくる。
ギリギリのところで地面に黒い跡が残るほどの急ブレーキをして止まった。
私は何が起こったのか分からずにいると
その外国人は「わっはっはっ!」と大きな声で笑っている。
「この笑い声は原田洋二郎さんだ」
サングラスをかけてヘッドホンをつけて髭を蓄えていたので見た目では分からなかったが、この笑い声は原田洋二郎さんだ。
終始、一方的に話して大声で笑いそして気が済むと「稽古頑張れよ」と言って去ってしまた。
私は状況が分からないまま圧倒されてしまったが、さっきまでの厳しい冬が試練の冬へと景色を変えた。
「今日も稽古がんばろ」
吉野雄作
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